医薬品市場を取り巻く環境は、革新的な新薬創出に向けたイノベーションを推進するための環境が整備される一方、国民負担の軽減を実現する観点から薬剤費を抑制する施策が積極的に導入されるなど、劇的に変化しています。
このような環境下、当社グループでは新薬普及による成長を重要課題と捉えており、中期経営計画「 Vision 110 -Stage1-」の事業戦略の1つとして「新薬比率の最大化」を掲げています。
医療機関への直接訪問によるリアル面談を軸にデジタルチャネルを融合させた情報提供を行うことにより、ディテールのインパクトを高めて成果に繋がる活動モデルを推進するとともに、ソリューション提供型の営業活動により、医療関係者の皆様や患者さんの多様なニーズ・状況に応じた課題解決に貢献していきます。
前中期経営計画で出揃った新薬(主力5製品等)の普及を加速させ成長トレンドの実現を目指します。
環境変化(社内外)
- 医療財政逼迫に伴う医療費・薬剤費抑制策の推進
- 治療に加え、診断・予防に対するニーズの高まり
- 医療現場への情報提供のあり方の変化(ガイドライン等の導入)
- 医療(治療)におけるDXの進展
機会
- 特許を有する新薬群のラインアップの拡充(ベオーバ、ラスビック、リフヌア、デザレックス、フルティフォーム等)
- 新型コロナウイルス感染症の拡大による検査需要の高まり
- 技術革新による新たな検査方法開発への期待
- 高品質な製品に対する需要の高まり
リスク
- MR訪問規制や完全アポイント制が進み、医師との情報交換の難化、面談機会の減少
- 薬価制度の抜本改革による長期収載品の売上減少の加速
- 国内医療用医薬品市場の構造変化
中期経営計画 「Vision 110 -Stage 1-」の取り組み
事業戦略新薬比率の最大化
新薬の普及最大化
- リアル面談を軸にディテールのインパクトを高め、新薬の成長を最大限に加速する
中期経営計画の施策
FC領域でのプレゼンスの確立
当社は呼吸器科・耳鼻科・泌尿器科を中心とする特定領域にリソースを集中するフランチャイズカスタマー戦略をベースとして、同領域でのプレゼンス確立を目標として、約650名のMRが医療関係者に医薬品の適正使用に関わる情報提供・収集・伝達活動を行っています。
営業体制としては、二次医療圏をベースとしたチーム編成による「チーム制」(一定のエリアを複数のMRで担当する制度)を導入し、チーム全体でエリアにおける製品普及の最大化を図るべく、エリアマネジメントを展開しています。多様化する医療ニーズに迅速かつ組織的に対応するこの取り組みを進化させ、お互いが助け合いチームで目標を達成する風土づくりを促進します。
- MRの体制
- 特定領域(呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科)を中心とする定期訪問先への営業活動の重点化を図っています。
- 主力製品と開発中の新薬
- 特定領域(呼吸器科、耳鼻科、泌尿器科)における開発パイプラインの拡充と医療関係者との強固な信頼関係構築により、新薬事業を強化しています。
ソリューション提供型営業活動の推進
医療関係者との面談が制約される中、当社製品を処方していただくためには、直接医療機関を訪問し、リアル面談を軸にインパクトの残るディテールを行うことが重要と考えています。そのために全MRに対してソリューション提供に結びつくディテールスキル教育を行い、能力向上を図ります。
患者さんを起点として問題の仮説を立案し、現状のニーズを把握することにより課題を形成し、複数の当社製品の中から適する薬剤の処方提案を行います。
感染症領域では、医療機関における感染制御(予防)に「ミルトン」「ルビスタ」、原因微生物の同定(診断)に「GeneSoC」、抗微生物薬の適正使用(治療)に「ラスビック」を継続的に紹介し、総合的な情報提供を行うソリューション提供型営業活動を実施します。
呼吸器科・耳鼻科疾患においては、咳嗽治療薬「リフヌア」、ニューキノロン系抗菌剤「ラスビック」、アレルギー性疾患治療薬「デザレックス」、喘息治療配合剤「フルティフォーム」等の製品ラインアップの充実に努めており、各疾患に対する処方提案を行い、医療関係者のニーズに応じた課題解決に資する情報提供活動を推進し、製品の普及拡大を図ります。
デジタルチャンネルを活用した情報提供
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、MRの医療機関への訪問、医療関係者との面談が一部制限され、情報提供活動においてデジタル化が進みました。
当社グループは、「医薬品情報の提供・収集・伝達によって医薬品の適正使用を実現し、医療に貢献する」というMR本来の役割を十分に果たすためには、医療関係者との双方向のコミュニケーションが重要と考え、医療機関を訪問し直接医師と面談するリアル面談を軸として、デジタルチャネルを融合することでインパクトディテールを強化し、営業力の充実を図っています。
社内に集積した営業データを統合して分析し、医療関係者のニーズを把握することにより、質の高い情報提供活動を推進していきます。
新薬群の成長トレンドの実現
当社が成長トレンドを実現するためには、新薬の普及に注力し成長を加速させることが重要と捉えています。医療用医薬品の売上に占める新薬の比率を経営指標(目標値50%以上)として、普及の最大化に取り組みます。
2023年度は、2022年度に限定出荷解除となった過活動膀胱(OAB)治療剤「ベオーバ」をはじめとして、「ラスビック」、「リフヌア」、「デザレックス」、「フルティフォーム」の処方促進に最大限注力し、新薬比率の拡大を目指します。
「ベオーバ」は、処方日数制限解除後に想定を上回る処方の増加により限定出荷を実施し、医療関係者の皆様に大変ご迷惑をお掛けしました。当社グループでは生産能力の増強に総力を挙げて取り組み、2022年8月に限定出荷を解除いたしました。新規処方の獲得も順調に進んでおり、OAB市場でのシェアNo.1を目指します。
2022年4月に新発売した、世界初の慢性咳嗽治療薬である「リフヌア」については、ポジショニング確立に向け呼吸器専門医を中心に製品特性の理解促進に努め、2023年度は処方日数制限解除を機に早期の市場浸透に取り組みます。
「ラスビック」は、薬剤耐性(AMR)対策による適正使用の推進、及び感染予防対策の徹底等による抗菌剤市場の縮小の影響を受けましたが、コロナ禍収束に伴い、一定程度市場が回復することを予想しています。今後は製品特性を訴求し、経口抗菌剤市場における売上トップ製品へと成長させていきます。
「デザレックス」は、耳鼻科及び内科へ取り組みに注力し、売上・シェアともに拡大しました。引き続き、有効性と使いやすさを兼ね備えた薬剤として、耳鼻科において処方率No.1を目指します。
「フルティフォーム」は、エアゾール製剤の有用性を訴求して、数量シェアの増加(1桁台前半)を推進します。